「アジャイル開発ってのに取り組むことになったんだけど、何を読んだらいいの?」という質問を受けたので答えてみた

「アジャイル開発ってのに取り組むことになったんだけど、何を読んだらいいの?」という質問を受けたので答えてみた

Clock Icon2019.11.29

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事業開発部の塩谷 (@kwappa) です。

いきなり家庭の私事で恐縮なのですが、今朝出がけに妻からタイトルのような質問を受けました。

そのまま「Slackにリンク投げといてね!」と言い残して出て行ったので(我が家では家庭の連絡にSlackを使っています)、やっきになってぺたぺた貼ったリンクをご紹介しようと思います。

といっても、アジャイル開発の経験がある方ならお馴染みのものばかりです。「あーなるほど」と納得していただけたら幸いですし、「これも読んどけ!」という推薦もお待ちしています。

「まずはこれを10回読む」

…と最初に貼ったのが「アジャイルソフトウェア開発宣言」 (Agile Manifesto)です。すべての始まりですから、ここを読まなければ始まりません。ほんとうは「100回読む」と書きたかったのですが、のっけからハードルは上がるし感じ悪いしなので自重しておきました。

しかし、表面だけ読んで「ドキュメント書かなくていいんだ!計画立てなくていいんだ!」と都合よく解釈するのはよくある失敗の第一歩です。「左記のことがらに価値があることを認めながらも」という一文を忘れてはいけません。

10回読み終わったら、あわせて「アジャイル宣言の背後にある原則」も読み、何のためにアジャイルという手法で開発するのか?をもう一度考えておくとよいでしょう。

定番の3冊 + 1

アジャイル開発の原理原則を確かめたら、次は書籍に進みます。アジャイル開発とはなんなのか、どうすればいいのか、を教えてくれる3冊を紹介しました。

アジャイルプラクティス 達人プログラマに学ぶ現場開発者の習慣

個人的に思い入れがあるので、この話題になるとだいたい真っ先に紹介するのがこの本です。10数年前、八重洲ブックセンターでこの本と出会ったことがきっかけで、開発手法について考えたりコミュニティ活動を始めたり転職をしたり、という人生のルートチェンジが発生したのでした。

タイトル通りアジャイル開発に用いられるプラクティスを事例集的に紹介しています。同時にアンチパターンや、なにより大事な「自分で考えて改善していくこと」を自然に教えてくれる本でもあります。

アート・オブ・アジャイル デベロップメント ―組織を成功に導くエクストリームプログラミング

https://www.amazon.co.jp/dp/4873113954/

スクラムが一般的になる前のアジャイル開発手法がだいたい網羅されている、教科書的な本です。重くてお高い読みでのある本ですが、読んだ分は必ず血肉になるのではないでしょうか。

アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~

「見積り」に特化した本で、こちらも読みでがたっぷりです。見積りだけでこんなに書くことあるんか…という感じですが、あるんです。

見積りはついつい「コミットメント」に変化してしまいがちですが、実態は「多少マシなあてずっぽう」から始まります。見積もった結果ではなく、見積りをする、計画を作るという行為そのものが「チーム作り」なのだと教えてくれる名著です。

アジャイルサムライ――達人開発者への道

ここまでは教科書っぽい本が続きましたが、こちらはカジュアルな文体と棒人間マンガが特徴の読みやすく面白い本です。もちろん書いてあることは簡単ではありませんが、「複雑な」あるいは「イノベーションの」業務であるソフトウェア開発を、変化を抱擁しながら楽しくやっていくために勇気をくれる本です。

妻には「いきなりこの本から読み始めるのはおすすめしない」と言ったのですが、身内なので厳し目に老害的な発言をしてしまったことを反省しています。この本をきっかけに興味を持ってから、先人の知恵である教科書的な本に進むのもいい読み方だと思います。

小説仕立ての2冊

アジャイル開発「だけ」の本ではありませんが、現場がどう変わっていくかを小説仕立てにした本は、何のためにアジャイル開発(やDevOpsやその他もろもろの取組)をするのかを楽しく体験できるのでおすすめです。

The DevOps 逆転だ!究極の継続的デリバリー

原題は「THE PHOENIX PROJECT」というかっこいいタイトルなのに、日本語はどうも微妙だ…と思うのはぼくだけでしょうか。しかし、内容はグッとくるいい本です。以前若手エンジニアに推薦したところ「全エンジニア必読では?」とまでいわしめていました。

開発の経験がある方なら、前半の苦労する部分には深くつらい共感が起きると思います。そこから痛快に「逆転」していくストーリーは希望と「現場をよくしよう」という勇気を与えてくれます。

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

前述の「The DevOps〜」同様、現場の苦悩とカイゼンを小説にしています。しかし、実際に現場で苦労してきた著者が、日本のソフトウェア開発現場をリアルに綴ったストーリーには、より深く共感できることでしょう。

この2冊は、ほんとうに読んでほしい人にはなかなか読んでもらえない、というジレンマがあるのも事実です。積極的に読んで共感してくれる人とは、きっと現場をよりよくしていくことができるでしょう。

そしてスクラムへ

今回はアジャイル開発の手法としてポピュラーな「スクラム」はスコープ外としました。ですが、アジャイル開発に取り組んでいると遅かれ早かれスクラムと出会うことになります。

ここでは、スクラムと出会う前に読んでもきっと役に立つであろう本を1冊だけご紹介します。

スクラム実践入門 ── 成果を生み出すアジャイルな開発プロセス

この本はスクラム開発に取り組む実際のチームが、そこで起こったことを事例として綴っている、という側面が強くあります。アジャイル開発におけるよくある問題と、それをどう乗り越えていったかという実体験に基づいた内容は、スクラムに学ぶ前でも価値があるものです。

変化を抱擁せよ 〜まとめに変えて〜

この記事では、ぼくがエンジニアとしてやってきた経験の中でよかった、役に立ったと思う本を紹介しました。ぜひみなさんも、よかった、役に立ったという本があったら教えてください。変化の激しいソフトウェア開発という仕事を、うまくやっていくための武器を増やしたいと思います。

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